パーキンソン辞典・お知らせ
パーキンソン病はまれでない、しかし怖くない
連載2、パーキンソン病に影響を与える環境因子とは?
喫煙習慣:喫煙習慣がある人はパーキンソン病の発症が少ないといわれています。これまでに40を超える疫学調査やメタ解析がありますが、喫煙習慣は約60%リスク軽減の効果があるといわれています。これらの関連は男女ともにみられます。でもほかの疾患のリスクがありますので喫煙は勧められません。
コーヒー・カフェイン:コーヒーには1杯あたり約60mgのカフェインが含まれていますが、コーヒー摂取はパーキンソン病の発症を抑えることが知られています。最近のメタ解析ではコーヒー摂取はパーキンソン病発症に対して約30%リスク軽減効果があると報告されています。またコーヒー、お茶等も含めてカフェイン摂取がパーキンソン病の発症を25%抑制すると報告しています。この関連は女性より男性に強く、女性に関連が弱い原因は女性ホルモンとの相互作用が疑われています。
農薬:農薬特に有機溶剤等の殺虫剤とパーキンソン病発症の関連が示され、46研究のメタ解析では殺虫剤、除草剤が危険因子であることが示されています。フランス男性のみの研究では、ワイン畑の従業員に多いという興味深い研究もあります。
頭部外傷:意識障害をもたらすような頭部外傷歴はパーキンソン病発症の関連が示されています。
生活習慣・代謝関連:糖尿病や肥満はパーキンソン病発症に若干の影響を与えているようです。脂質異常症に関しても強い関連は示されていませんが、脂質異常症の治療薬として使用されるスタチンに関しては、メタ解析で約20%の発症リスク減少効果があるとされています。高血圧の既往も関連は見られていませんが、降圧剤のカルシウムチャンネル阻害薬使用によりパーキンソン病発症を約25%のリスク減少効果が示されています。パーキンソン病患者は健常者に比べて血中の尿酸濃度が低いといわれていますが、尿酸は生体内の酸化ストレスを軽減する物質であり、血中尿酸値が高い人は低い人よりもパーキンソン病発症が33%低いとされ、この傾向は男性のみにおいてみられるようです。
栄養関連:長鎖不飽和脂肪酸摂取、ビタミンA(βカロチン)、ビタミンC, E摂取はパーキンソン病発症を抑制する可能性があります。ビタミンDが高値の人はパーキンソン病の発症が少ないことが示されています。食事中のポリフェノールのうちフルーツや赤ワインに含まれるフラボノイド摂取はパーキンソン病発症を低下させますが、この結果は男性のみで、女性には関連が示せませんでした。